ギャンブラーの時事放談

事件事故の真相を鋭く斬りこむ現場監督のブログです

足場倒壊死亡事故にみる安全管理意識

昨日埼玉で足場が強風にあおられて倒壊し
 
幼稚園児1名が死亡し、1名が重傷と言う痛ましい事故が発生しました。
 
報道の当初から足場本体が躯体に控えを取って
 
いないという事が言われていましたが、本当の
 
「鳶職」ならこのような手抜きは絶対にしないでしょう。
 
「ビケ足場」は「げんのう」や「ハンマー」一つで
 
組み立て、バラシができる足場としてここ20年ほど利用されている足場です。
 
当然、この仕組みからして安価な足場として重宝されているのも事実です。
 
単管足場、抱き足場といった元来の足場とは違い
 
あまり頭を使わなくてかけられる足場です。
 
今回の事故の場合、改修工事で1式いくらと言う
 
形の請負である事は現場を見れば誰にでもわかります。
 
現場監督が必要のない工程作業のように思えますが、
 
実際問題として一番重要な工程です。
 
改修工事であのような単独足場の場合
 
屋上の笠木をまたいでクランプで壁を挟み込み
 
地上から1間程度か最下階の手すりに「さん木」と
 
番線(箱番線か巻き番線)と新聞紙で養生を兼ねて
 
控えを取ります。欲を言えばこの中間にもう一か所控えをとれば十分です。
 
ただしどんな足場でも同じ高さで90度違う方向から控えをとらないと
 
効果がありません。(コーナー単独の場合)
 
最善を期すならこれ以外にロープを躯体に絡ませて
 
置く事もします。今回の事故は明らかに安全管理の確認を
 
怠った結果が招いたものと、職人の安全管理意識の欠如です。
 
この事故を先ほどのNHKニュースで流していましたが、
 
ここに登場した「一級建築士」の方の説明を聞いていて
 
呆れました。この方の言っている事は新築工事のみに通用する事です。
 
あの足場の場合、壁つなぎを取る事は非常にリスクを伴う事になります。
 
RCでもS造でも新築のときに敷設した壁つなぎ用
 
高ナットあるいは金物が躯体内部に残っています。
 
これを利用できる場所に足場がかかればよいのですが
 
今回の場合は壁にアンカーを叩きこむか前出の方法
 
しかありません。アンカーはALC版の場合、内側を壊す
 
可能性が大きいのでほぼ使用しません。
 
一級建築士」の方解説を現場の人間がみれば
 
この人の経験値が分かってしまいます。
 
なぜ施工管理技士と呼ばれる人間に取材をしないのでしょうか。
 
この事故はそれぞれの業者の置かれている
 
状況の違いが起こした事故ともいえます。
 
都心で工事を請け負っている業者の安全に対する
 
考え方と、地方の業者のそれとの意識レベルの差が如実に表れた事故と言えます。
 
4月から1年生となるはずだったこの子どもの
 
冥福を建築関係者の一人として祈ります。